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”ウィズコロナ”で急上昇 ロシアのスタートアップ6選!

5月25日、日本の緊急事態宣言が全面解除された。

コロナウイルスの世界的流行をうけ、学校にいけない、お店の営業ができない、移動ができない、会いたい人に会えない、また、デマの拡散、自粛警察の出現など、社会全体が混乱に陥った。

生活は180度変わり、ビジネスでは苦境に陥ったものもあれば、逆に急成長したのもある。

今回は、”ウィズコロナ”のロシアで熱い視線が注がれているスタートアップを紹介する。


1.ロシアのスタートアップ事情

Telegram、Tradingview、このサービス名は誰もが一度は耳にしたことがあるだろう。実はロシア発のスタートアップだ。

現在、MTS(ロシア最大手通信キャリア)、スコルコヴォ、また米シリコンバレーのアクセラレーターへの参加など、ロシアのスタートアップ市場は白熱している。

ロシアのベンチャー投資市場は2014年以降、各国からの制裁、景気低迷、通貨の下落により停滞が続いていた。マクロ経済の安定的な成長が見込みにくい中、ロシアのベンチャーファンドはリスクヘッジのため、ロシア国内企業よりも、海外企業への投資に重きを置いている。

しかしそんな中、ロシアのファンドオブファンズ“RVC”の調査によると、2019年のロシア・ベンチャー市場規模は2018年と比較して約50%の拡大という記録を残した。国内経済の不安定さ、という決定的な悪条件を考慮すると、著しい結果を残したと言っても良いのではないだろうか。

また、5月27日にはStartupBlinkが、2020年版の世界中の1,000都市と100か国のスタートアップエコシステムのランキングをリリースし、ロシアは17位ランクイン、都市レベルだとモスクワが9位で(昨年10位)、上海、シアトル、パリなどが後に続き、東京は16位だった。



2.ロシアのコロナ状況

ロシアはアメリカに次いで世界2位の感染者数を記録したが、ロシアでの感染者数のピークは過ぎ去り、現在はブラジルが同国の順位を引き継いでいる。

エリート層が利用する欧州航空便を規制せず、3月にイタリアやスペインの休暇から戻った富裕層がウイルスを持ち込み、これがロシアでの大きな感染拡大の原因の一つとなってしまった。3月30日には国境を封鎖し、ロックダウンに踏み切るも、やはり油断は命取りとなり、一時期は一日1万人を超えるペースで感染者数が増加していた。5月からは、通行の際にマスクと手袋が義務化されている。

日系邦人はというと、国境封鎖前、また封鎖後も臨時便によって多くの留学生や駐在員が帰国した。

ロシア政府は7月1日までSNS、検索、ニュース、デリバリー、通販、銀行、科学、教育、美術館等文化系のサイトなど、計391サイトデータに通信無料でアクセスできるようにした(速度は10 Mbit / sまで制限される)。

学生は、3月中と比較的早い段階で、オンラインに移行して授業をうけている。労働もリモートワーク化、レストラン等は配達サービス(Yandex eda等)による営業をつづけている。


3.ロシア大手企業のコロナ対策の取り組み

4月にロシア政府が2.14兆ルーブルで同社の50%+1株を握った最大手銀行のズベルバンクは、消毒ロボットを開発したり、治療薬やワクチンの開発、地域の保健機関の支援を目的に、新型コロナウイルス対策に30億ルーブル越えの支援を行った。

ロシア最大手通信会社のMTS(NTTが2004年にiモードのライセンスを契約している)は、リモートインターンを募ったり、スモールビジネス向けのオンラインマップサービスを立ち上げた。

ロシアのグーグルといわれるYandexによる感染者の多い地域がわかるオンラインマップなどもある。

https://yandex.ru/maps/covid19


4.コロナの影響で急成長中のスタートアップ6選


クラウドゲーム ”Playkey”

友達と会えず、ぽっかり空いた時間を過ごす定番のお供として、ゲームの存在が欠かせない人は多いだろう。

クラウドゲームのプラットフォーム”Playkey”の利用者数は1.5倍の伸びをみせた。

従来であれば高性能パソコンでしか動作しなかったようなオンラインゲームが、クラウドゲームであれば、ストリーミング映像を受信し、コントローラーの信号を送信できる端末さえ準備できれば、一般的なPC・スマホ・タブレットなどで、簡単にプレイすることが可能だ。


おうちレストラン ”Elementaree”

ロックダウンでレストランが閉まっている中、自宅でプロのような料理を作れるのは人々にとって魅力的だ。自宅でできる調理キット市場は、確実に成長をみせている。

調理済みの料理よりも安く、また、作る、という娯楽性も兼ね備えていることもあり、ここ数週間でElementareeへの需要は3倍になった。製造ラインはフル稼働と順風満帆で、最近ロシア直接投資基金と、そのパートナー会社から、投資の合意も果たしたところである。 

様々なメニューがあり、ヴィーガンや、ダイエット向けのもの、子供メニュー、一週間キットなどがある。また、お試しセットもあり、気軽に注文できる仕様となっている。


AIで英語をまなぶ ”MyBuddy.AI”

いま、子どもたちは学校に行く代わりに家で勉強をしている。MyBuddy.AIは子供向けの英語学習アプリで、キャラクターが子どもたちの語彙力を向上させ、彼らの発音をチェックする機能がある。

サービスから離れていた従来のユーザーが戻ってきて、新規ユーザーの有料サービスの利用が目立ったことで、収益は20%の増加をみせた。

4月あたまに、LETA Capitalから100万ドルの投資を受けている。


遠隔医療サービス”BestDoctor”

こちらはユニークなDMS(※個人が任意で加入する民間の医療保険)のスタートアップだ。BestDoctorはオンラインで、従業員の福利厚生となる企業向けDMSを提供している。

もともとは企業の従業員が、チャットで薬の相談ができたり、自分にあった診療所を見つける、という趣旨のもと開発されたサービスだが、コロナウイルスの流行をうけ、保険加入者以外も医師に相談できる無料のバーチャルクリニックのサービスもはじまった。

24時間365日、世界中からアクセスできるのが魅力的である。システムには使用履歴が残るため、余計な診療をうけたり、医師側のミスも防げるうえ、医療機関側もデータ収集が容易になるなど、利点が多い。


ロシアには2種類の健康保険がある。全国民に加入が義務付けられているOMSと、任意で加入するDMSだ。OMSを使えば、国民は、国立の医療機関に無料でかかることができる。しかし、その場合の問題点として、国立の医療機関は民間よりも設備や技術が古く、また、待ち時間や診断が出るまでが非常に長い為、(ロシアでは多々あることだが)満足できるサービスレベルではない。 また、国立病院にかかる際、医療機関、医師を自由に選べないという問題もある。

DMSの場合、個人で保険会社やプランを選んで加入する。勤務先が福利厚生として社員を加入させていることも少なくない。価格帯は様々だが、提携している民間の医療機関を自分で選んで、レベルの高い医療を受けることができる。

このオンライン医療コンサルテーション、バーチャルクリニックは、忙しい現代人が医療を受けるプロセスにかける時間を減らす有効なサービスである。


オンラインコース”Skillbox”


Skillboxは、自宅で自らの能力を高めたい、自分の興味関心分野を見つけたい、という人にはもってこいのサービスだ。プログラミングや、WEBデザイン・フォトショップ等のクリエイティブ系、SNSを使用したマーケティングやPR、コピーライトのコース等、かなり細分化された学習コースがある。自分に必要なレベル、モジュールを好きなように選べぶことができる。2020年6月20日までは、無料で開放されているコースもある。

CEO ドミトリー・クロトフによれば、4月中旬時点で、アクティブユーザー数は1週間で20%増加、WEBデザインやプログラミングコースの需要は30%高まり、課題の提出は以前と比較して40%増えたそうだ。


子育て世代の味方 ”Wachanga”


自粛期間中、家族が一緒に過ごす時間は通常時よりも圧倒的に長くなっている。家族がより近くなる良い機会、といえるが「週末の予定」のないこの期間、やはりストレスも増える。子どもたちも自由に外に出られないことで、フラストレーションは溜まっている。

そこで子育て世代の味方として現れたのがWachangaだ。知的・身体的発達、社交性、豊かな感情を育むコンテンツが利用できたり、また子育てハックなども閲覧できる。タイムラインで子供の成長を記録できたりと、子育てを総合的にサポートする育児アプリだ。

3月に政府がコロナ対策に動き始めたと同時にユーザー数は増え、2週間で20%の成長を記録している。




ベンチャー投資家のアレクセイ・ソロヴィヨフによれば、ロシアの多くのスタートアップ創業者が自身のアイデアの独自性を過大評価しており、正しくない自社評価がなされてると考えており、これらが投資家を惹きつけられない大きな原因である、と述べている。

今回紹介したスタートアップ創業者は、ウィズコロナ、アフターコロナの社会の需要を冷静に分析して開発を続けている。様変わりする社会はどんなサービスを欲するのだろうか。新たな生活に貢献する、革新的なスタートアップの出現、発展は大いなる期待と注目に値するであろう。

(執筆:藤原 純麗)